東京地方裁判所 昭和34年(ワ)240号 判決
以下は、判例タイムズに掲載された記事をそのまま収録しています。オリジナルの判決文ではありません。
〔事実と判断〕原告は被告から一〇〇ミリ鉄丸棒四七一〇キログラムを代金三六五、〇〇〇円で買受けたところで、みぎ鉄棒は外形上なんらかしが発見できなかつたが、切削り使用しようとしたところ、亀裂を生じ工作機械には全然使用できなかつた。原被告の売買契約には、工作機械に使用できない不良材であるときは原告において直ちに契約が解除できる特約があるから、この特約に基き売買契約を解除し、代金の返還を求める、と主張した。被告は古鉄、古機械取扱業を営んでおり、本件丸棒を古鉄で現物有姿のまま納品したもので、値段も古鉄値段であつた。契約にさいしみぎ丸棒を工作機械に使用するという話もなく、被告において品質保証をしたこともない。原告主張の特約は否認する、と抗争した。
判決は本件取引が被告主張どおり古鉄の売買であることを認める一方、売買の目的物件に多少のかしの存することを認めたが、京浜地方における古鉄売買の商慣行に言及して原告の契約解除は失当である、と判断し、つぎのとおり説明している。曰く、
「証人――、――の各証言によれば、被告の納入した鉄棒を機械製作のため切削したところ中央部に亀裂があることを発見したというのであるが、なお同人等の証言によれば右は僅少二、三本についての所見に止まることは明らかであり、他方証人○○の証言によれば、同人が原告と前後して被告から買受けた略同一の鉄棒については何等右のような亀裂その他の瑕疵がなかつたこと、及び鉄材について深い亀裂があることは稀であり、かりに一部に亀裂があつても全部に亘つて存在することはないこと、従つて一部使用に堪えない部分があつても全部使用不能とはいえないこと並びに古鉄売買の場合には多少の瑕疵はやむを得ないものとして不問に付し買主がその不利益を負担するのが京浜地方における慣行となつていることが認められ、以上の事実に照すときは、本件売買において原告主張のような特約があつたことも、被告が引渡した鉄棒の全部又は一部につき買受の目的に達することができないほどの瑕疵があつたことも共に認定するに足る十分な証拠がないといわなければならない。」